犯罪者の手記を出版する国

 カナダで連続殺人犯による手記が、Amazonで出版されたという記事。数時間後には、siteから取り消されたものの、国民からの抗議を呼ぶことになり、出版停止を求める5万人以上の署名が集められた、と報じられている。

Canadian serial killer’s self-published memoir reaches Amazon

A memoir reportedly written by Canadian serial killer Robert Pickton and smuggled out of prison by another inmate has been withdrawn from sale on Amazon within hours of appearing on the website.

Pickton: In His Own Words was published by Outskirts Press, a Colorado-based self-publishing service on 29 January. It was added for sale on Amazon Canada on Monday. The Vancouver Sun reports that in the 144-page memoir Pickton repeatedly claims he is innocent, in between references to the Bible and entire transcripts of his interviews with police.

British Columbia’s provincial government and Outskirts Press contacted Amazon.ca and asked for it to be withdrawn from sale. During the time it was on Amazon.ca, family members of Pickton’s victims asked the public to not read it, more than 50,000 people signed a petition asking Amazon.ca to pull it, and multiple one-star reviews were added to the book’s listing, with messages urging customers to not buy it. It was removed from Amazon.ca and Barnes and Noble soon after.

The Guardian

 Amazonと手記を刊行した出版社は、すぐに誤りを認め、本の販売を停止した。この手記を発行してしまった出版社は、自費出版本の刊行を請け負っている会社だった。著者名が犯人のものとは別名義で出されていたため、出版社側は、この著書が犯人の手記であることに気付かなかったようだ。

 連続殺人犯による手記の出版。。。

 そーいえば、似たようなことが最近どこかの国でも起こっていたなぁ。その後の対応は全く異なるものだったが。。。

日本とカナダの差

 2015年6月、神戸連続児童殺傷事件の犯人による手記が太田出版より出版された。

 殺人を商売のネタにする極めて悪質で非倫理的な行為だが、そのこと自体よりも、この記事を読んで、日本とカナダのあまりの彼我の差に愕然としてしまった。。。

 なんなんだ、この民度の差は。。。

手記の出版後、5万人以上の署名が集まり、出版は即刻停止された。
手記の出版後、さまざまなメディアで取り上げられ、初版10万部の売り上げを記録した。出版一ヵ月後の7月には早くも第3刷が出され、出版社は今後も増刷を続けることを明言している。

手記を出版した出版社は、自費出版を請け負う小規模な企業であった。今回の出版は、第三者の手によって原稿が持ち込まれ、犯人とは別名義であったため、内容に関しては見落としていた。
手記を出版した出版社は、大手出版社で、本書の企画、編集は、出版社が行った。

犯人が書いた手記は、それが真実かどうかはどうであれ、自らの無実を訴えたものだった。
犯人が書いた手記は、ナルシズムに酔っただけの自己正当化を永遠と繰り返すだけのものであり、遺族への謝罪の念は感じられない内容であった。

犯人は、判決を受け、現在、刑に服している。
犯人は、少年法の下で保護され、実刑を受けていない。(保護処分決定)

手記は、実名による告白である。
手記は、犯人の成人後に書かれているにもかかわらず、実名は明かされず、匿名のまま出版された。

犯人は、服役中のため、現在のところ、たとえ売れたとしても印税を受け取る手段はない。
犯人は、多額の印税を受け取っていると思われる。

 まぁ、どちらが、どちらの国であるか。。。もう言うまでもないだろう。

 そーいえば、この加害者の親も文藝春秋から匿名のまま手記を出版して小銭を稼いでいた。

 犯人の手記を平然と出版する倫理観の欠如した出版社。初版で10万部が売れる低俗で覗き見趣味の国民。表現と出版の自由の名の下にすべてが許されてしまう脆弱な思考回路。思想・信条が欠落していて、金になりさえすればそれでいいという態度。そして、これが商売として成り立つ美しい国、ニッポン。

 出版社曰く、若者の活字離れが深刻なのだそうだ。本の売り上げが毎年落ちていて、出版文化が危機的なのだそうだ。
 出版文化の危機を招いているのは、出版社自らだろう。そもそも、こんな低俗な日本の出版文化など、はじめから守るに値するものなのか。

 自分は読書家を自認しているからあえて言わせてもらうが、日本の出版社は、一度全て潰れた方が良いんじゃないか。そのほうが日本の出版文化のためなんじゃないかと、最近本気でそう思う。

 とまぁ、この記事を読んで、そう思った次第でございます(了)