神経細胞のはたらき – 脳科学超入門

脳を構成する2種類の細胞

 人間の脳は、主に二種類の細胞、ニューロンと呼ばれる神経細胞とグリア細胞によって構成されています。
 神経細胞(ニューロン)は、脳の基本的な働きである情報伝達を担っています。一方のグリア細胞は、神経細胞が情報を正しく伝達できるように補助的な役割を果たします。

 神経細胞とグリア細胞―――
 これら二種類の細胞がそれぞれの役割を果たすことで、脳が情報処理機関として機能しています。これら二つの細胞の特徴と働きを以下に見て行きましょう。

生まれたときから増えない神経細胞

 神経細胞は、胎児期に急速に細胞分裂を起こして、増加します。この増加は、9カ月ほどで止まります。そして、増殖した神経細胞は、互いに連絡を取り、回路を形成していきます。この時、回路を形成できなかった神経細胞は自ら死を迎え、約半分の神経細胞がこの過程で消えてなくなってしまいます。

 胎児は、生まれるまでの間に、この神経細胞の増加と減少の過程を完了させます。そして、その後、神経細胞は、一生を通じて細胞分裂を起こしません。つまり、神経細胞は生まれたときの状態から増えていくことはありません。人は、生まれるまでの間に、神経細胞の数が決定してしまうのです。

電気信号としての情報

 神経細胞は互いに離れていて、それぞれ独立して存在しています。神経細胞同士は、木の枝状に広がった無数の樹状突起と一本だけ長い軸索を伸ばして、互いに情報をやり取りします。樹状突起は、他の神経細胞から情報を受け取り、軸索は情報を他の神経細胞へと伝達する役割を持っています。

 神経細胞は、細胞膜の内側と外側のプラスとマイナスのイオンを選択的に通過させることで、電気信号を生じさせています。この電気信号を活動電位(インパルス)と呼びます。
 この電気信号を伝えることで、神経細胞は、情報の伝達を行っています。つまり、神経細胞の情報は、電気信号として伝わるということです。

神経細胞
軸索を互いに伸ばして回路を形成する神経細胞群

シナプスの働き

 神経細胞同士は、樹状突起と軸索を相互に伸ばすことによって連絡を取っています。この樹状突起と軸索の接続部は、シナプスと呼ばれ、わずかな隙間が空いています。これは、シナプス間隙と呼ばれています。

  神経細胞で生じた活動電位は、軸索の先端まで伝達されます。軸索の先端には、シナプス小胞という神経伝達物質の入った袋があり、先端まで伝えられた活動電位の総量が閾値を超えた場合、この小胞から神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。
 シナプス間隙のもう一方の情報を受け取る側には、他の神経細胞から樹状突起が伸びていて、その先端には、神経伝達物質を受け取る受容体があります。この受容体が神経伝達物質を受け取ることで、情報が神経細胞から他の神経細胞へと伝達されていくのです。

神経細胞
シナプス間隙とその間を伝わる神経伝達物質(ピンク色のものが神経伝達物質)

 神経伝達物質は、アミノ酸などからできている化学物質です。つまり、神経細胞間の情報伝達は、電気信号と化学信号を相互に変換しながら行われるのです。

グリア細胞の役割

 グリア細胞は、電気を通さない絶縁体の役割を果たしたり、神経細胞に栄養を運んだり、神経細胞の周囲を掃除したりして、神経細胞の働きを助けています。

 グリア細胞には、主なものとして希突起グリア細胞、星状グリア細胞、ミログリア細胞の3種類があります。

 希突起グリア細胞は、中枢神経周辺に存在して、神経細胞の軸索に巻き付いて鞘状の髄鞘と呼ばれる筒のようなものを形成しています。この髄鞘は、絶縁体の役割を果たしていて、電気信号が混線するのを防いでいます。
 髄鞘を持った神経細胞ほど、正確に早く情報を伝達することができます。

神経細胞
軸索とそれに鞘状に連なってついている髄鞘(水色の筒状のものが髄鞘)

 星状グリア細胞は、多数の突起を周囲に伸ばし、血管と神経細胞の間をつないでいます。このグリア細胞は、血管から神経細胞に栄養を運ぶ役割を持っています。

 ミクログリア細胞は、多様な形をしていて、神経細胞周辺の異物や代謝物の回収を行っています。