【バイトテロまとめ】従業員による炎上動画が繰り返されるワケ

アルバイトの店員

*バイトテロ一覧

 今年に入ってから、度々、話題となっている「バイトテロ」。

 飲食店などで働くバイト従業員が、店舗内で撮影した不適切動画(画像)をSNS上に投稿して炎上する騒ぎを「バイトテロ」と呼ぶらしい。

 最近、炎上したもの一覧がこちら↓

 ・くら寿司店員、生魚を一度、ゴミ箱に入れ、それをまな板に戻す。
 ・すき屋店員、氷を床に投げて遊ぶ。お玉を股間に当てる。
 ・ビックエコー店員、唐揚げを床に押し当ててから調理。
 ・セブンイレブン店員、おでんのしらたきを口に含んで悪ふざけ。
 ・ファミリーマート店員、商品を舐めてから袋詰め。
 ・セブンイレブン、別の店員、おでんの具を口に入れてから吐き出して、鍋に戻す。
 ・大戸屋店員、下半身裸になり、局部をお盆で隠す。

 まぁ、確かにこれはヒドイ。。。
 特に飲食を扱っている店舗で、こうした不衛生行為を見せられてしまうともう二度と行かないという気になってしまう。

 しかし、これ、今になって始まったことではなくて、昔から頻繁に起きていたことが、SNSとスマホが普及したせいで、表に出てくるようになっただけだろう。実際、SNSとスマホが一般に普及した2010年頃から、こうした問題がしばしば話題になってきた。
 今と昔とで違うことは、従業員による悪ふざけがSNSで拡散されることで、社会的な影響が大きくなり、企業が被る被害が甚大になったという点だ。だからこそ、「テロ」と呼ばれるのだろう。

*企業側の責任

 アルバイト店員による相次ぐ不適切動画の炎上騒ぎ。多発するバイトテロの原因や背景には何があるのかと、さまざまな議論が噴出しているが、だいたい3つに絞れるんじゃないだろうか。

 1)社会的責任に対する自覚のない幼稚な精神のままの若者
 2)現場作業をバイトに依存しすぎる企業の労働環境
 3)不適切動画を探し出してきては、炎上させて悦に入るネットユーザー

 直接的な原因は1)、本質的な原因は2)、問題を現代特有の劇場型にして、社会的な影響を甚大なものにさせているのが3)といったところだろう。

 騒ぎのきっかけとなった従業員を処罰するのは、企業が取る最初の対応としては正しいかもしれない。しかし、これは問題の本質的な解決ではない。

 今年2月頃からの一連のバイトテロ騒動のきっかけともなったくら寿司は、売上と客入りが大幅に減少、株価も下落し、損害額が莫大になった。
 くら寿司は謝罪に追い込まれ、当該従業員を法的に損害賠償請求することも検討していると発表した。

 こうしたくら寿司の対応を非常に評価する声が、ネット上には大量に溢れかえっている。だが、従業員に対して損害賠償を行うというのは筋違いだ。労使関係には、企業側に「報償責任」という原則がある。従業員が起こした問題に関して、まず第一義的には企業にその責任がある。

【参考記事】

ironna.jp

 その責任を認めないまま、従業員に賠償請求を行うというのは、企業の責任を従業員に転嫁しているだけだ。
 そもそも、くら寿司は、問題の動画が撮影された際は、バイト従業員しかいなかったため、事態を把握できていなかったと説明していた。
 個人的には、こちらの事実の方に驚いた。チェーン店やフランチャイズの飲食店なんて、半調理済みの料理をバイト店員が仕上げて出しているだけだ、とは以前から思ってはいたが、それがいざ事実です、と起業から公表されるとやはりビビる。調理場に、少なくとも一人ぐらいは責任者がいるだろうと、かすかではあっても期待していたからだ。。。

 調理現場にはアルバイト店員しかいないのだ(まぁ分かってはいたが)。アルバイト店員に現場丸投げ。それを管理監督する正社員の責任者は誰一人いない。それでいて企業は、問題が起きれば、現場の全責任をアルバイトに負わせようとしているのだ。

 一方、優等生的な対応をしたのは、大戸屋だ。全店舗を一日休業し、その日を従業員の再教育に当てるとした。くら寿司の対応に比べれば、いくらかマシだが、それでも本質的な対応策ではない。問題の原因が従業員にしかないと思っている点で、くら寿司と変わらないからだ。

 ネット上では、SNSに投稿された不適切動画を探し回っては、あえて拡散させて、個人叩きをする人たちがいるらしい。こういった人たちをネット上では「修羅の民」というらしい(すごい言葉だ)。
 「バイトテロ」といった問題は、こうした呼び名が与えられる前からずっと存在していたものだろう。しかし、この問題を劇場型の見せ物にして、今現在、話題にさせている原因は彼らだ。

 彼らにとっても問題は、従業員個人にしかないと思っている。というより、問題の所在など、彼らにとってどうでもいいことなのかもしれない。独善的な正義感に酔って、個人叩きのできることが、彼らの愉しみなのだろう。それがさらに炎上して、マスメディアを巻き込んだ劇場型になればより面白いのだろう。中には、個人情報を特定して、それをネット上で拡散させているものまでいる。彼らのやっていることは、正義でも何でもない。 

*バイトテロのほんとうの背景

 今回、問題となった動画はすべて、現場にアルバイト従業員しかいないという状況で撮影されている。
 そして、すべてが、チェーン展開、あるいは、フランチャイズ経営を行っている企業で起きている。

 70年代にフランチャイズというアメリカの経営手法が日本に導入され、80年代を通じて市民権を得るようになった。そして、90年代後半以降の日本の長期デフレ経済下においても、確実に業績を伸ばすことのできる経営手法として日本全国を席巻した。
 今や日本の駅前や繁華街、地方のロードサイドは、どこへ行ってもフランチャイズとチェーン展開している飲食店や小売店で埋め尽くされるようになった。日本全国どこへ行っても、全く同じ景色が広がっている。

 こうした経営の特徴は、規模のメリットを生かした原材料費の引き下げ、中央一括管理によって経営ノウハウを集めることで、業務のマニュアル化を図ること、そして、何よりも、人件費を含む販管費の極限までの圧縮。。。

 こうして出来上がった企業というのは、現場作業をすべて非正規雇用にして、最小限の人件費で店舗運営を行うこうしていく。当然ながら、こうした企業からは、労働に対して全く責任感を持たない従業員が大量に生まれることになった。これで従業員による問題行動が起こらないと考える方がどうかしている。
 で。今頃になって、あわてて従業員の再教育を徹底するなどと言っているのだ。

 問題の本質は明らかに、チェーン展開やフランチャイズ経営といった、従業員に対して何ら社会的責任を負おうとしない企業の経営体質にある。労働者は非正規で使い捨て。最低限度の賃金。そのくせ、現場の業務全般を彼らの労働に依存している。こうした現場労働者の犠牲の上でしか成り立たない経営。。。

 企業が労働者に対して責任を持とうとしないのに、労働者が業務に対して責任を持とうとするだろうか。

 実際、これらの不適切動画を投稿した者たちが、「バカッター」という言葉や報道されている数々の炎上動画を知らなかった訳ではないだろう。知っていても、自分には関係のないものとして受け止めていたはずだ。労働に対して責任感が芽生えない限り、いくら指導しても、いつまでも他人事のままだろう。そういった意識の従業員に、いくら見せしめ的な賠償請求をしたところで、抑止効果は少ないと思う。

 発覚したバイトテロは、氷山の一角にすぎない。バイト従業員による大量の悪質行為があり、その内のごく一部が撮影され、さらにそのなかのごく一部がSNS上に投稿され、さらにそのうちのごく一部が、拡散されて炎上している。
 ほとんどのアルバイト従業員にとって、炎上しているのは、「やり過ぎてしまった」ごく一部の人たちの話であって、SNSにアップさえしなければ問題にはならないのだ。彼らが、こうした問題に対して、他人事という意識しか持たないのは、ある意味当然だろう。
 いくら従業員個人を叩いたところで、彼らがアルバイトである限り、「業務に対する責任感」は絶対に芽生えない。「やり過ぎた奴」「運の悪い奴」が見つかるだけだ。

 非正規待遇のバイトに現場業務を丸投げして、依存している限り、バイトテロは決してなくならない。これは構造的な問題だ。現場がアルバイトだけなら、いくらでもうこうした悪質な悪ふざけは起きるだろう。企業としては、従業員から就業中のスマホ利用を禁止して、表沙汰にならないようにさえすれば、問題解決なのかもしれないが、問題が起きる背景は何ら変わらない。

 こうした構造的な原因が何ら省みられず、放置されたままで、バイト店員の指導、教育を徹底したところで、単なるいたちごっこにしか終わらないだろう。

 日本の多くの議論では、構造的な原因に目を向けるという「社会学的な知見」が絶望的に欠けている。 
 非正規雇用に現場作業をすべて依存し、人件費を極端まで抑えなければ利益が出ないような営業手法の方こそを問題にすべきだ。本来、こうした経営手法の下でしか利益が出せないような非効率な企業は、市場から淘汰されてしかるべきなのだが、日本が長期不況にあえいでいる間に、「デフレ経済下の勝ち組」として、業績拡大を続けてきた。
 バイトテロによって話題となっている企業は、すべて東証一部上場の企業だ。コンビニやチェーン店の居酒屋といった下品で薄汚い企業が、東証一部で一流企業ヅラしているのが今の日本だ。こうした企業の経営は、現場の疲弊と犠牲の上でしか成り立たない。

 責任は従業員側にあるのか、企業側にあるのか、といった議論をちょくちょく見かけるが、議論する人の立場や信条によって、従業員側を叩いたり、企業側を責めたり、と答えが、はっきり別れていて、見ている分には興味深いが、こうした真の犯人探しは、なんだか不毛な気がする。当事者叩きは、叩く人間のストレス発散にしかならない。「繰り返して起きる」という問題に関しては、その社会的な構造の方に目を向けるべきだ。

 企業の経営方針と雇用体系を改めない限り、永遠と続く問題だろう。しかも、企業が再発防止策として従業員のSNS利用を制限していけば、問題を引き起こす構造は全く手つかずで残されたまま、問題の発覚だけが防がれていくということになる。
 結局、不利益を被るのは利用者だ。利用者は、問題を起こした個人を叩いてストレス発散する前に、企業の責任こそを追及するべきだろう。

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