【裏口入学】東京医科大学不正入試問題まとめ

東京医科大学不正入試事件

 東京医科大学の不正入試問題が波紋を広げている。

 7月4日、文部科学省政策局長の佐野太容疑者が受託収賄の容疑で逮捕された。東京医科大学を文部科学省の私立大学支援事業の対象校に選定する見返りに、佐野容疑者の息子の同校への不正入学を求めた疑い。

 現在までに報道されている内容をざっとまとめてみると。。。

・東京医科大学の臼井理事長や鈴木衛学長ら、合否判定に権限がある複数の幹部が直接、佐野前局長に事業の選定を依頼し、見返りとして佐野の息子を合格させることを決めていた。
・佐野前局長と臼井前理事長の接触は、医療コンサルタント会社役員の谷口浩司容疑者を通じて行われた。

 佐野容疑者は昨年5月までに計3回、当時医療コンサルタント会社役員だった谷口容疑者の設定で臼井氏と3人で会食。この中で臼井氏は平成28年度に東京医科大が「私立大学研究ブランディング事業」の対象校に選定されなかったため、29年度は選定されるよう申請書の書き方の助言を求めた。佐野容疑者は文字を大きくすることや図表を入れることなどを助言したという。

 その際、佐野容疑者は医学部志望の息子について「東京周辺の医大に入れたいが、どこがいいか」と尋ね、臼井氏が東京医科大を薦めたところ「一番行きたいと思っているのでよろしく」と発言したという。

産経新聞(2018年7月23日)


・東京医科大学の不正入試は、複数年に亘り、組織的に行われていた疑惑が浮上。佐野容疑者の受託収賄事件は、氷山の一角との見方が濃厚に。

 関係者によると、入試担当課長は数年前の就任直後、臼井前理事長から「裏口入学があるから承知しておいてほしい」などと告げられたという。不正合格の実務などを、前任者から聞くよう前理事長に指示されたといい、今年度の不正にも携わった可能性がある。

毎日新聞(2018年7月23日)


・東京医科大学同窓会が、合否判定の優遇を求める受験者のリストを過去に作成していたことが発覚。

 複数の関係者によると、同大では卒業生を経由して同窓会などが、合否判定での優遇を求める受験生の親族らの依頼を集約。リスト化して大学幹部に伝えていたという。

 ある同大関係者は取材に「合否判定ではリストの記号に従って加点された。◎は『絶対頼む』、○は『可能なら』、×は『加点不要』という意味で、臼井前理事長の指示だった」と話した。

朝日新聞(2018年7月19日)


・2次の小論文、面接試験のみならず、1次の筆記試験の段階から、佐野容疑者の息子だけでなく、複数の受験生に対して、不正が行われていた。

 東京医科大学(東京)が今年2月に実施した入試の1次試験で、複数の受験生の試験結果のデータが改ざんされ、点数が加点されていたことが関係者の話でわかった。東京地検特捜部は、大学のパソコンなどを「デジタル・フォレンジック(DF)」で解析。受託収賄容疑で逮捕された同省前局長・佐野太容疑者(59)の息子を含む複数の受験生に対する不正を確認した。

 関係者によると、佐野容疑者の息子が受験した同大医学科の一般入試では、数学・理科・英語のマークシート方式(数学の一部を除く)で1次試験を実施。合格ラインに達した受験生が小論文などの2次に進み、両方の試験結果を合算して合否が決まった。1次の採点は同大が委託する外部業者が行い、試験結果を電子データで同大に戻していた。

読売新聞(2018年7月22日)

前代未聞の1次試験不正

 医学部への裏口入学―――
 今回の東京医科大学に限らず、不正入試が医学部で広く行われているのではないかという噂や疑惑は昔から根強くある。

 こうした疑惑が持たれる背景として、世間一般に「医者の子供は、だいたい医者」という印象が広く存在するせいではないだろうか。開業医が自分の医院を息子に継がせるという話はよく聞くことだろう。

 医者の子供が医者になることが多い理由として、一般的によく言われることは、「医者は金持ちだから、自分の子供を医学部に通わせるだけの経済力がある」というものだ。だが、教育格差という観点から考えたら、この説明はおかしい。

 職業選択肢の幅が狭くなるのは、教育機会の少ない貧困層の方で、富裕層は、自分の望む教育が十分に受けられるため、職業選択肢の幅は増えていくのが一般的だ。
 それが「医者の子供は医者」というように、職業選択が医者という特定の職業に偏る状況は、明らかに競争原理が歪められている、ということだろう。
(政治家、芸能人、寺の住職などなど、2世3世の多い職業に碌なものはない、と私なんかは常々思うのだが。。。)

 特に東京医科大学は、縁故採用が激しい大学と受験業界では常識だったらしい。

 関係者によると、かつて同大で行われていた「裏口入学」は2次試験で半ば公然と加点されていたという。今回の事件は前例のない1次試験での加点で、前理事長らが極秘裏に不正合格を進めた実態が浮かぶ。

 東京医科大のある現職教授は、こう証言する。かつては定員120人中、半分以上が医者の子供だったが、近年は約20人、うち約10人は同大出身者だという。

産経新聞(2018年7月23日)

 面接・小論文の2次試験で「ゲタを履かせる」というのは半ば公然と行われていた。。。

 面接試験でゲタを履かせるというのはよくあることなのだろうという、普通の人でも薄々感じてたことが、今回はっきりと明るみに出てしまった。実際、多いのだろう。二次試験の縁故採用の何が悪い!と開き直る医者までいる有様だ。

参考
裏口入学を高須克弥院長が告白「入学金も半額にまけてくれた」 – Livedoor News

 しかし、今回の事件で発覚したのは、2次だけでなく、1次の筆記試験での不正だ。
 上記の読売の記事によれば、複数の受験者で、マークシートの点数データの改竄を行っているのだ!
 東京医科大学は、マークシートの採点を外部業者に委託していた。もし仮に、委託業者に対してデータの改竄を指示していたとしたら、1次試験での不正は、非常に容易になる。試験結果のデータ改竄は、本当に今年だけだったのだろうか?

 さらには、東京医科大学では、1次試験を免除する特別枠なるものまで存在する。

 「佐野前局長の逮捕後、永田町では自民党のA議員の名前が話題になっています。A議員の子供が東京医大の入試で“ゲタ”を履かせてもらったようだというのです」(永田町関係者)

 「子供が東京医大に入学したのは事実。しかし、現在、特捜部が捜査している『不正入学』とは全く無関係です。子供は、高校時代の成績を基にした『特別枠』の選考試験を受け、入学を果たした。今回の事件では1次試験で『加点』があったとされていますが、『特別枠』での選考は1次試験を経るものではありません。だから、そもそも不正入学の対象ではあり得ませんよ」

 A議員の複数の親族が東京医大の関係者だという。それが疑われる理由のひとつになっているのかもしれない。

日刊ゲンダイ

 この「特別枠」という制度の存在自体が非常に奇妙なものだ。不正や縁故採用の温床になることは火を見るより明らかだ。この噂の上がった議員の子供をはじめ「特別枠」による合格者が非常に怪しく見えるのは、果たして私だけだろうか?

医者の資質は。。。

 こうした一連の疑惑がもし仮に事実だとすれば、学力そのものが足りていない医学生が相当数存在しているということになる。
 医者は仮にも人の命を預かる職業だ。重責を担っている。学力不足、努力不足の人間が、コネを理由に就業するなど許されていいはずがない。

 しかし、医師になるには最終的に国家試験を通過しなければならない。そのため、多くの人は、たとえ不正入学した人物でも、国家試験を合格して医者になっているのであれば、最低限の学力は備えていると思っているのではないだろうか。

 だが、医師国家試験の合格率は、なんと90%以上だ。
 この国家試験は、医学部の入試試験を突破し、6年間医学について学んでいる、ということを前提にした上での試験なのだ。十分な学力はあるものと想定した上での試験であり、医師としての資質を見極めるためのものというよりは、最終的な確認のための試験と考えた方が妥当だろう。

 ちなみに、東京医科大学の平成29年度の医師国家試験の合格率は、驚異の97.1%!!
 医学部にさえ入り込んでしまえば、あとはほぼ確実に医者になっているという実態がある。
 こうした状況を危惧する声は、現役の医師からも聞こえている。

「裏口で入っても、国家試験だってあるんだし、そういう人は医者になれないのでは?」

 そうとばかりは言い切れません。医師の場合、医学部に入学し、卒業したら「医者になる」ことをかなりの確率で確約されているようなものなのです。たとえそれが、同業の医師から見て「えっ、この人大丈夫?」という知識レベルの人でも……。

 文部科学省の私立大学支援事業をめぐる、東京医科大学の裏口入学問題。汚職容疑で逮捕された前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者の長男は、一次試験から加点されていたとも報じられた。国立大学の医学部を卒業し、現在総合病院で生活習慣病を専門とする医師の小田切容子さんは、勉強不足の人がお金で医師になりうることもある医学部の現状を嘆く。

現代ビジネス

 東京医科大学医学科の2018年度の受験者数は3535人、合格者数は214人で、倍率は16.5倍という非常に狭き門だ。それが国家試験の合格率では、97.1%へと跳ね上がる。
 素人目に見てもおかしな数値だ。医者になれるかどうかの振るい分けは、実質的に医学科への入試の段階で行われていると言ってもおかしくないだろう。だからこそ、裏口入学が横行するともいえる。

問われる大学の統治機構

 大学の組織機構というのは、非常に閉鎖的で、外部からの監視もほとんど入らない。
 今年、日本大学理事会の運営があまりに社会通念から逸脱している姿が露呈されたが、東京医科大学も理事長の臼井に権力が集中しすぎて、まともな統治(governance)が機能していなかったようだ。

 報道されている関係者の証言からは、臼井前理事長の強権的な姿が浮かび上がってくる。

 同大のある元教授は、臼井前理事長が学長になった際のエピソードとして「東京医科大は同窓会の力が強かったので、教授会の存在感を示すための『改革の旗手』として臼井さんを送り込んだ。そうした意味では学内で期待された人材だった」と話す。

 別の大学関係者は「下が提案しても、『これでいく』とはねつけるワンマンタイプ」と評する。今年に入って臼井前理事長の意向で、これまで2期6年だった理事長の任期に関する定款は3期9年に延長されたという。

毎日新聞(2018年7月24日)

 お前は、習近平かっ!!

 臼井氏は当時、一部委員に裏口入学リストを渡していたとされる。2次試験後の入試委員会の場で臼井氏が、リスト掲載者の小論文の点数について「この点数はちょっと違うんじゃないか」と声を上げると、意向を察した入試委員が「そうですね」と同調し、点数が加算されたという。

 ある大学元幹部は、臼井氏が異例のやり方で不正合格を主導した動機をこう推し量った。「われわれにとって文科省は“神”。局長どころか課長でも学長自らが出迎えるほどだから

産経新聞(2018年7月23日)

 官僚との利権構造を作り上げることで、自らの権力基盤を維持しようとしていたのかもしれない。
 佐野前文部科学省政策局長の息子を不正入学させる見返りに、東京医科大学は、文部省の私立大学支援事業の対象校に選定され、3500万円の助成金(税金)を受け取った。

 皮肉にもこの助成金(血税)は「私立大学研究ブランディング事業」に対して支払われるものだった。ある意味、東京医科大学が一躍有名になったことだけは確かだが。。。

医療現場の信頼回復を

 この問題の本質は、官僚の収賄事件や大学の汚職といった点ではない。
 医師という人の命を預かる職業に従事する者の資質は、きちんと保証されているのか?ということだ。
 多くの医師は誠実で優秀な人物で、尊敬に値する人たちだろう。しかし、胡散臭いヤブ医者がいるのもまた事実だ。

 この事件は、医者、ひいては医療制度全体への信頼を大きく損うことにつながりかねない。東京医科大学は、過去の入試もすべて再検証して、不正合格者のすべての洗い出しを行うべきだ。
 今回発覚した「合格者優遇リスト」には、同大の医療関係者の名前だけでなく、官僚、政治家の名前まで含まれているという。今後の捜査の進展次第では、政界を巻き込む大騒動に発展するかもしれない。

 東京医科大学は、東京地検の捜査に協力し自浄作用を働かせるのか、それともリストにある人々を庇って、さらなる「ブランド」の低下を招くのか。

 まずは、すべての医師が適正な能力を持つ信頼に値する人物であることを大学側は証明してほしい。信頼回復はそこからしか始まらないだろう。

*引用文中の太字強調は、引用者

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